中国小紀行(八)「Driving? Riding?」 [旅行 - 中国]
洗濯日和ですね。前回の記事でコアファイターを紹介と書いたので、今日はこちら!
(※ちなみにコアファイターとは、アニメ機動戦士ガンダムのなかに出てくる小型戦闘機のこと)
阜新へ来てずっと気になっていたんですよ。実家の納屋の奥に格納されている、これ。
荷台を見ればリアカーのようにも見え、それを引いているのはバイクのようで、しかし電動の3輪。なんて呼べばいいんだろう...。
(リアカー…だと後ろだけになってしまうし)
(かといって電動バイクでもないし…)
(トライク=3輪バイクともちょっと違う気がする…)
えーい。ここは、そうあれだ!
「コアファイター」
今日はこの名前で通します。
あ、また義父さんが出かけようとしています。ちょっと見せてもらいましょうか。
荷台の横にロゴがある。駱駝電池...このコアファイターの愛称は「らくだ電池」号と呼ぶのかな。
「義父さん、どっか行くんですか?」と問いかけると、「おお、これに興味あるか?座ってみろ」とばかりに手招きが返ってきた。どうやら、座らせてもらえそうだ。義父の隣に腰を下ろしてみる。
ふぃぃーん、おー、走り出した。おー、家が遠くなってゆく。おー、おー、あれ?
どんどんと進んでゆきます。コアファイターいきなり出撃。あっけにとられたままの、妻の顔も遠ざかる。いかん!急なことに、カメラを家へ置いたままだ。
「カメラ~!」
というわけで、今回路上からの画像につきましては、皆々様の空想力をお貸しくださいませ。m(_ _)m
スピードの調整はこのアクセルレバーを捻るのか。
完全電動のため、一般のバイクや、我が家の FIAT 500c のエンジン音や振動は一切ありません。レバーを捻ると、いきなりフィィーンと動き出します。
こうしてみると、操作系は基本バイクと同様。スピードはそこそこ出ます。多分 30~40km/h 弱くらい。
義父の運転するコアファイターは、先日「阜新の夜」の記事で紹介した、あの大きな道路へと向かっている。片道2車線+もう1車線+路側帯のあるような、広い道。これを左折するつもりらしい。ビービー言ってるウィンカーに、「ウィンカーついてるんだ、これ」と少し驚きを隠せな…いえ、隠します。
ちなみに中国は自動車右側通行のため、この大通りを左折すると言うことは、4車線近い道を横断して向こう側の車線へ行くということになる。車道を流れる数こそ多くないものの、それでも目の前を車がびゅんびゅんと走り去る。
義父は信号による車の流れを読みながら、コアファイターを加速させ、何とか無事反対車線へと入れる。
しかしコアファイターの体感速度は 30km/h ちょい。いかんせん普通車に比べれば、その巡航スピードは低い。
中央線を横切り右側車線へと移ったものの、速度の遅い車両は、更にそのもっとも右(奥)の車線へと移動しなくてはならない。(右側通行なので、一番右側の車線が速度の低い車となる)
「うひゃ~」
ふぃぃーん、なんとか間に合った。
ここからは通りも大きく、また車線の数も多いので、比較的心に余裕が出る…義父さんが、何か手振りで訴えてる。
「お ま え う ん て ん し て み る か」
「う ぃ ?」
そういえば、妻にこんな質問をしたことがある。
「これって運転するのに、どんな免許がいるんだろうね」
答えて曰く、
「お父さん、免許持ってないと思うよ」
近所だし、大丈夫なんじゃないかなって...えええー!そういうもんなの~。
妻とのやり取りを思い出しつつ、隣に座っている義父へ答えます。
「うんてんめんきょがないので、むりですよー、ははは」
棒読み、興味津々。これで加速、これで減速、ふむふむ。
ところで、私は中国語をしゃべれません。なので、義父とのコミュニケーションは、もっぱら「雰囲気」です。ボディーランゲージでもありません。さしずめアニメ機動戦士ガンダムに出てくる「ニュータイプ」。心が時折通じ合うコミュニケーションなのです。
だから義父が私に「運転してみるか」と聞いたのも気のせいなら、私が応じたように見えたのも、すべて気のせいです。つまりこっからの記事は、「私」が運転したんじゃないですからねー。間違えないでくださいねー。ねー。
確かに速くはない。ふぃぃーんと軽やかに唸るモーター音。風を浴びながら走る感触は、やはり楽しい。
家の近所をぶらぶらしていただけでは出会えなかった景色が、目の前、左、右と広がる。やや乾燥した大気、西に広がる畑の上は、空が少しだけ橙色に染まるなかを、幅の広い道路がアップダウンしつつ伸びている。ミラーにも後ろ遠くに大きなトラックが見えている。
「んぐぐ」
スピードが落ちてきた。やはり上り坂はきついようだ。
「ん!?」
メーターに気になる表示。針の位置が、緑色から黄色へ移動してる。
「お と う さ ん、これ、これこれ、な に ?」
何と言うか、明らかに残りの充電量が、みるみる下がっている。
残り 70%, 60%, 50%, ...赤いゾーンが近づく。
「お と う さ ん、や ば く な い か ?」
実は義父さんもニュータイプ、こちらの疑問を察してくれたのだろう。
「だ い じょ う ぶ! く だ り に な れ ば、か い ふ く す る」
なるほど回生エネルギーか。下り坂でタイヤが勢いよく回る、その回転はモーターを回し、発電した電気をバッテリーへと蓄めることで、エネルギー残量回復する仕組みなのか。
残り 40%, 30%, ...(o.o;
「うぉぉ~」
レッドゾーンに入ったくらいのところで、なんとか坂乗り越え、今度は下りだ~。やった!バッテリー残量が急激に回復している。50%, 60%, 70%、一安心。
それにしても、どこまで行くんだろう。少しだけ、帰りのバッテリー残量が気になってくる。ミラーへ視線をやると、さっきより大きなトラックが近づいている。かなり荷物を積んでいるようだ。大型のエンジン音も聞こえてきた。
道は緩やかに右にカーブをしながら、再び上り坂に差し掛かっている。行く手には看板。緑色で、多分、こう書いてある。
「高速道路・北阜新インターチェンジ入り口」
走りつつ、義父さんに「どこまで?」と念波を送ってみるが、ニュータイプのチャネルが閉じているのだろう、通じない。本当に、ど、どこまで?エネルギー残量計の針が、再び下降を始めていた。
40%, 30%, 20%, ...レッドゾーンのなかを、残量計の針が先ほど以上の勢いで落ちてゆく。
そして背後から存在感を増しているものが...大排気量エンジン音、後ろにトラックだ!
「うぉぉー」
みるみる速度の落ちるコアファイターの横を、天高く荷物を積み込んだトラックが通り過ぎる。風で煽られるコアファイター。そば行く大きなタイヤから感じる威圧感。頑張れ、コアファイター。行け行け、我々。
いかん、ますます楽しくなってきた。
上り坂は右へカーブしてゆき、やがて IC の入り口が見えてくる。緑色の看板なので、日本とおんなじ雰囲気だ。しかし義父の視線はまっすぐのまま。
「お、お と う さ ん、ま さ か、ま っ す ぐ (高速に乗っちゃう) ん じゃ な い よ ね???」
念が通じたのだろう、こちらを振り向くと、
「よ し、U た ー ん だ」
笑顔で返してくれた。
20% を割ったバッテリー残量を目にしつつ、ハンドルを切ってコアファイターの向きを変える。
ここからは下り坂なので、バッテリー補充できそうだ。ふぅ~。
ここまでの上りは厳しかったから、今度はその逆、結構な下り坂。
(お、お、おっ)
声こそ出さなかったが、今までにない速度で駆け下りてゆくコアファイターに、唇だけでつぶやく。
義父さん、これが、これが重力、地球の力なんだね!とは言わなかったが、やはり身体に当たる風の強さから、感じるスピードもかなりのもの。思わず操縦桿(別名ハンドル)を握る手にも力がこもる。
帰りは少しコースを変え、大きな道から離れ、近所の道路を突き進むコアファイター。
家が近づくにつれ、ご近所の方々が、こちらを見てる気がしてならない。ようやく見慣れた路地へとやってきたとき、既にバッテリー残量が 40% ほどになっていた。速度を落とし、ゆっくりと滑走路へのアプローチ、もとい実家へとハンドルを切る。
「コアファイター、着いたぞ、あれがホワイトベースだ」
門をくぐり、母屋の手前に止め、モーターも停止。なんか騒がしい気がする。しかし耳をすませても、周囲は静かだ。ああ、久々にドライブして少し高揚したのかも。コアファイター、無事生還。バッテリー切れにならなくて良かっ…て、あれ、義父さん?
「ふぃぃ~ん」
コアファイターの向きを変えるや、義父さんはそのまま出かけていったのだった。
大丈夫なの~、バッテリー足りるのー?
中国大平原、コアファイターに安息の日々は訪れるのか。行け行けコアファイター、戦え駱駝電池!
(^^;
ということで、次回はいよいよ阜新を離れます。
どんなモビルスーツになるのか…(・_・;)
by 下総弾正くま (2012-10-03 21:44)
下総弾正くまさん
今回連邦の白いのとか、Gアーマーとかを発見することができませんでした。
以前大連では水中用っぽいものを見つけられたのですが (^^;
by じみぃ (2012-10-04 07:36)
うちの嫁さんの実家(農家)にもこれと同じような3輪車がありますがディーゼルエンジンです。
中国はもう電動なんですか…ま、負けてしまったぁ〜(^^;;
by カオル (2012-10-10 14:27)
カオルさん
中国だとペダル付のバイクも電動だったりしてました。
FIAT 500c のツインエアエンジンは振動もでかいので、エンジンとして振動のないモーターには、やはり違和感がありました。
でもこれからの時代、たとえば「お!ジャガーのモーターはトルクの盛り上がりが違うんだよね」とか「マブチのモーター、いいっすよね」とかといった会話になるんですかね。あ、でも電気モーターは最初からトルクMAXなんでしたっけ?(^^;
by じみぃ (2012-10-11 07:43)